さて 前回でこのコーナーは一旦お休みにする予定でしたが(『大釜温泉その2』の最後を参照)、ついつい「休暇村」にも行ってしまいました。
休暇村田沢湖高原に着いたのは午後1時頃。
国民休暇村とは、国と財団法人国民休暇村協会が設立した物。要するに公の観光施設である。
建物は今まで行った乳頭温泉郷のひなびた旅館とは異なり、いかにも”温泉ホテル”という雰囲気。
中に入ると建替えられてそれ程たっていないので、何から何までピカピカしている。
有名な温泉地のきらびやかな温泉ホテルとまではいかないが、広くて新しくて清潔である。
|
|
休暇村のHPより |
携帯電話のカメラで撮った画像 |
昔(建替え前)来たときがあるが、建物はしっかりしていたが多少年季が入っているなという感があったと記憶している。
当時露天風呂は屋根無しの屋外風呂で、湯船の底に溜まっている湯の花の堆積の厚さ(これって言い換えればホテル側の怠慢?)に驚いたものだ。
フロントで入浴料500円を払うと、「風呂は3階です」との事。
『3階なの?』と若干の戸惑いを覚えつつも、エレベータで3階へ向かう。
3階の客室のある廊下の一番奥に温泉があった。
ちなみに3階といっても山の斜面に面しているため、実質的には1階と同じであった。
脱衣所で服を脱いで貴重品はロッカーへ。
ロッカーは無料で、鍵はリストバンドに付いているタイプなので非常に助かる。
さて、いざ内湯へ。
内湯は二つの湯船を有しているが、あらかじめネットで調べた通りのお風呂である。
床と人の丈の高さまでの壁は石のタイルが張られている。
洗い場にはシャワーと水道の蛇口が整然と並んでいる。
それの各洗い場にはシャンプーやボディシャンプー等が色々置かれている。
タイルから上の空間は雰囲気を出すために木で構築されている。
お手本のような設備の行き届いているホテル旅館の大浴場である。
|
内湯(休暇村HPより) |
しかし他のホテル旅館と決定的に違うのは、乳頭温泉郷という土地柄 源泉の「かけ流し」な所である。
これが無かったらはっきり言ってここには来ていない。
・・・ どこにでもある温泉ホテルの一つでしかなくなってしまうので。
源泉は2つのようである。
内湯の一つは緑に茶色を混ぜたような色 ・・・ ちょうど大釜温泉と同じ湯質である。
炭酸水素塩泉で「乳頭の湯」と名を打っている。
もう一つは薄く白濁した湯で、単純硫黄泉。
鶴の湯の色と似ているが、「鶴の湯」ほど白濁していないし円熟した感じがしない。
むしろ滑らかな中にもパワーを持っている感じがする。
骨の芯まで遠赤効果で温めてくれるのだ。
「田沢湖高原温泉の湯(?)」と名を打っている。
二つの湯を比べてみると、むしろ前者「乳頭の湯」の方が柔らかい感じがする。
どちらの湯も身体の芯まですぐに温めてくれたので、内湯から外に出て露天風呂でのぼせた頭を冷ます。
露天風呂はご丁寧に板塀でしっかり囲まれており、真ん中にある湯船の上には東屋のような屋根が掛かっている。
湯質は単純硫黄泉 ・・・ 薄く白濁した方の湯である。
|
露天風呂(休暇村HPより) |
露天風呂だけに外気に冷やされて湯の温度は低目。
それでもよく身体を暖めてくれるので、足だけ湯に浸かる。
この乳頭温泉という秘湯においては、不思議な事に温泉の設備が整っていればいる程に「つまらない」温泉に感じてしまう。
つまりは、「他のどこにでもある温泉にいるのと変わりはないのでは?」と感じてしまうのだ。
だから此処に来る人はシャワーも水道の蛇口も、当然シャンプー類も欲しいとは思わない。
・・・ それどころか電気さえも。
その極致が「鶴の湯」のランプの宿である。
本当にこの秘湯に来ようと思う人は、宿泊施設にテレビなど必要なのであろうか?
此処まで来て夜中にテレビを見ていたら、今までの生活と何の代わりがあるのであろうか?
求めていたのは静かでゆったりと流れる時間なのではないであろうか ・・・
現代的な快適な空間が欲しい人は秘湯に来る必要は無い。
時間と金銭に余裕があれば有名温泉旅館に行けば良いし、そうで無ければ街中の健康ランドに行けば良いだけである。
この休暇村は設備の整った立派な建物である。
それがいけないとは言わない ・・・ それはそれで良いと思う。
あとは訪れる人が何を求めるのか? ・・・ それだけの問題だと思う。
ちなみに私としては、改装前の露天風呂の湯船の底に厚く溜まった”湯の花”の驚き!
・・・ そういう物が欲しい。
つまりは『快適な空間が必ずしも贅沢な空間とは限らない!』・・・と思っている。
誤解の無いように言っておくが、休暇村は設備が整った上に異なる二つの源泉を有する良い温泉である。
現に私もこの源泉には充分堪能した。
脱衣所で着替えてホテル内を玄関に向かう。
風呂場から出て整然とした廊下を歩いていると、余韻に浸ることなく現実に引き戻されたような感もある。
『う〜ん、良い施設なのだが、この秘湯の地で我々が求めているのは自然と人間味なのだよ
・・・ 』
風呂から上がってビールでも飲みたかったが、車の運転があるので牛乳で我慢する千石であった。
さて、今回で乳頭温泉郷は冬季間で入れるところは制覇したのでお終いです。
(ちなみに黒湯温泉は冬期間閉鎖。孫六温泉は雪崩の関係で営業していません)
乳頭温泉郷は数多くの源泉を有しているため、色々な湯質が味わえて面白かったです。
皆「掛け流し」なので、名前だけの温泉とはやっぱり違いますね ^^
残りの二つの温泉は夏場にでも入りに行こうと思っています。
その時まで、しばしお休みです。