千石の独り言温泉の部屋黒湯温泉

 


みちのく秘湯シリーズ ・・・ 乳頭温泉郷   第6回 「黒湯温泉


5月7日()

  さて いよいよ黒鯛釣りを始めようと思っていたら、週末にかけて天気が崩れてきた  ^^;
日曜日の天気予報は生憎の雨。
  日曜日の早朝に起きると、案の定 予報通りの天気 ・・・

 『嗚呼、金曜日が雨だった段階で河に雪代(雪融け水)が入って水温が下がるから、きついなと思っていたのだが・・・』

  しょうがないので、乳頭温泉郷へ行くことへ決定。

   8:40頃自宅を出発。
途中「みちのくの小京都」と言われる「角館」の桜を見学。

土手の桜並木は花びらの絨毯 武家屋敷通りの枝垂桜

  火曜日に「角館の桜は満開」という新聞記事が載っていたので、『日曜日の今日は もう遅いのでは・・・』と思っていたが
ソメイヨシノはちょうど良い感じに散り始めたところであった。
  枝に花を残しつつも、道を桜色の絨毯と化している。
おまけに風が吹くと、絵に描いたような花吹雪が舞う ^^

  観光客が『来て本当に良かったね ^^』と のたまふのも当然である。

  非常に満足して、乳頭温泉郷へと向かう。

乳頭温泉郷

  この乳頭温泉郷は秘湯であるが、「黒湯温泉」と「孫六温泉」は 「休暇村」から更に細い道を入ったところにある。 
普通車はこの細い道を入っていけるが、大型車は無理。
  「休暇村」でバスを降りた人達は、「黒湯温泉」・「孫六温泉」まで徒歩なので大変そうである。
しかしそれも良い思い出になるのかもしれない。

  午前11時過ぎに「黒湯温泉」の駐車場に到着した。
本当はここから5分ほど歩かないといけない「孫六温泉」に入ろうと思っていたのだが、
駐車場の「黒湯温泉」の案内板が自分を誘っているように思えたので
『歩くのは面倒臭いから黒湯温泉にしよう・・・』という事になった。

  ・・・ 千石は全くを持っての無精者である ^^;

  駐車場から細い坂を下りると、すぐ下の河原端に黒湯温泉が見える。

駐車場から下りる坂から見た黒湯温泉 事務所(受付)

  いかにも湯治場という雰囲気の年代物の建物である。
正面の事務所に出たので、受付で入浴料500円を払う。

  風呂は2箇所 ・・・ 事務所の右を上った「上の湯」と、左側を下った「下の湯」である。
どちらも事務所の建物とつがっていないので、とりあえず事務所を一旦出て「上の湯」へと向かう。

上の湯」入り口 内湯 露天風呂(奥は源泉の河原)

  「上の湯」の入り口から入ると、狭い脱衣所の向かい側は「内湯」である。
内湯の一部が脱衣所と言っても差し支えないような造りである。

  服を脱ぎながら 『おや、誰も入っていないようだ・・・』 と気付いたので、いきなりデジカメで「内湯」と「露天風呂」の画像を確保。
  すると先程受付で見かけた浴衣姿のオヤジが入ってきた。
それ以上の撮影は諦めて、脱衣所のすぐ傍にある出口から奥(外)へと出た ・・・ そこは露天風呂である。

  これまた『妙乃湯』の「銀の湯」や『大釜温泉』を髣髴とさせる東屋風の屋根が掛かっている。
露天のすぐ傍は もう源泉の湧き出る河原地帯である。
そこから筧で湯が注ぎ込まれている。

  湯質は白色で硫黄臭が強目である。メロウな感じで『鶴の湯』の白湯と似ている。

  何気なしに先程入ってきたオヤジと話を始めたが ・・・ このオヤジ実はとんだクセモノであった
最初は普通の会話になっていたが、次第にオヤジの独演場となった。
  要するに私の口をはさませずに、ひたすら自分の言いたい事を言い続けるのである。

  ちなみにこのオヤジは 今まで何度も乳頭温泉に来たことがあるらしいが、
今回はなんと黒湯温泉にもう4泊もしているのである (しかも一人で!) 。
  ただでさえ一人で同じ所に連泊するのは辛いところなのに、ここはテレビも無い秘湯の旅館。
1人では1泊がせいぜい良いところである。家族でも2泊が良いところか・・・?
  おまけにこのオヤジ、今日も更に1泊して東京に帰るらしい。
全くをもって何を考えているのかよくわからない ・・・(普通想像出来そうなものだが・・・)

  その為であろう・・・私の作り笑顔が苦痛に変わり始めてきても 気にしないでしゃべり続ける。
他人が迷惑でも、自分が満足するように時間を潰せれば それで良いように ・・・

  さすがに私も 「そろそろ下の湯に行こうと思っているのですが、どう行けばいいですか?」と言って切り抜けようとした。
するとオヤジは「下の湯」の様子を教えてくれた。
  『ではちょっと行ってきますね』・・・と言おうと思っても、オヤジの独りよがりの話は終わらない
だから言える機会がない ・・・ ^^;

 「下の湯の源泉はこことは違うんですよ。源泉が違うということは別のお風呂に入ると同じ事で・・・(中略)・・・
私は電話で問い合わせるときに必ず源泉が幾つあるのか訊くようにしているんです・・・・」
  自慢げな話は続く ・・・

  以下 「心の叫び」です ・・・
”魔邪コング
(マチャマチャ)風”に・・・

  『はあっ?! そんな事当たり前だろ!
1つの源泉を何軒もの旅館で共有する他の温泉と違って ここは乳頭温泉郷なんだよ!
はあっ?! ・・・ この時代に電話だと・・・?!
こっちはネットで詳しく調査済みなんだよ!!!』

  終いにはこのオヤジは図に乗って
「温泉の入り方が分からない人が多いですね・・・教えてやらないといけませんね」などと言い出す。

  この時になると自分でも作り笑顔が思いっきり引きつっている事を実感していた
しぶしぶ私が「そうですね・・・」と言うと 私に向かって

 「あなたのような温泉の入り方が一番悪いんです!熱いお湯に長時間半身浴をした後にお風呂から上がると
湯当たりをおこすんです!私は一度も湯当たり下ことがありません!」

・・・ などと言い出す始末。

  『湯アタリしているのは、お前の頭の方だろ!
こうさせたのはお前なんだよ!
俺はさっきから上がりたくてしょうがないんだよ・・・!
普通なら気付くぞ・・・自分勝手な話は迷惑なんだよ!』
 
(魔邪マイクを下に叩きつけ退場 ^^:)
 

  それから少ししてようやく解放された ^^;

  『では、どうもありがとうございました』と言って出て行く私は、傍から観てもかなりイタイ物があったと思う。
実際、かなり痛かった・・・ ^^;  
私のヒットポイント(HP)は幾らも残っていなかったであろう ・・・

 

  ちなみに、このオヤジはこういう事を繰り返しているみたいだ(=話の内容から他に被害者いる)

  本来悪い人間では無い様だが、暇をもてあましているからと言ってそのストレスの様なものを初対面の者にぶつけられても困る。
  ある程度相手が嫌がっているのを感じているようだが、『まあ、いいや』くらいにしか思っていなさそうな所がまた始末に終えない。
  そうでなければ時間を持て余して感覚がずれているのか、もう軽く一杯やっちゃったかどちらかである。
 
こっちは全くを持って白昼に性質たちの悪い酔っ払いにからまれたようなものである ・・・ ^^;
 

  脱衣所で一旦服を着ていると内湯にまだ入っていないことに気付く。
  「湯当たり」ならず「オヤジアタリ」をした私としては 一回外に出て冷たい空気を吸いたかったので、
内湯をパスして外へと出た。
・・・ まあ、源泉は露天風呂と同じなのだから 問題は無い。

  気を取り直して「下の湯」へ。

  事務所を通り過ぎ、今度は坂を下っていくと質素な宿泊棟がある。
それを通り過ぎると、河原へ下りる階段があってその先に「下の湯」がある。

   「下の湯」は男女別に(中で)仕切られた1つの建物である。
建物の傍に源泉とその貯湯池(?)なるものもある。
  ちなみに「黒湯温泉」は源泉の温度が他の温泉より高く、沢水を足して温度を下げているくらいである。

下の湯」の源泉 「下の湯」の建物。左側の入口が男風呂。右側が女風呂。

  さて、「下の湯」の建物に入ろうとすると、近くにあった小屋から腰にタオルを巻いた裸の男が出てきて「下の湯」の建物へと入っていった。
  『あの小屋は何なんだろう? トイレかな?』と思って近づいてみる。
すると、入り口の上半分は御簾で隠されているが、その下から中は丸見え。
  その正体は『打たせ湯』でした。

  『嗚呼、これじゃあ中を見て下さいと言っているようなものだよ・・・』

  この「打たせ湯」は男子専用のようである。
HPで調べた所では、「下の湯」の女風呂の中には(女性)専用の「打たせ湯」と「露天風呂」があるらしい。
  勿論それを確かめる術は無いが、その事から考えると この打たせ湯の小屋は「男専用」のようである。
  ・・・まあ女性専用なら、こんなにオープンなはずも無い。

  この「打たせ湯」は後にするとして、「下の湯」の男湯へと入る。
するとここも 内湯の中の一角に脱衣所があるというシンプルな構造である。
  そこで脱衣所で着替えながらも、さり気無くデジカメで湯船の画像を撮る

脱衣所から さり気無く(?)撮った「下の湯」 中が丸見えに近い「打たせ湯」

  裸になってお湯へと浸かる。
お湯は(源泉が異なる為)「上の湯」ほど白くない。
  銀色に近い白色と言うところか・・・
  (『妙乃湯』の「銀の湯」を思い出した)

  湯船に入った感触は、「上の湯」程 メロウ(円熟)じゃない。
むしろシャープ
(鋭さ)なものを感じる。

  しかし、どちらの湯も硫黄泉だけあって硫黄臭がある。
ちなみに次の日、車中と千石の身体が硫黄臭をプンプン発するくらいに・・・

  すぐに身体が芯から温まるので、湯船を出たり入ったりを繰り返した。
そこで気付いたのが、ここも「蟹場温泉」と同じように四方八方・上下左右(?^^)の全てが木で囲まれた空間という事である。

  『嗚呼、木に囲まれているよ ・・・不思議と安らぐよ ・・・ 』


 

  日本は木造住宅であるが、実際に暮らしている我々はそれ程に木と接していない。
木造住宅と我々の間には、現実には「壁紙」があったり「絨毯」があったり 木に塗られている「ニス」があったりする。
  直接的な木の温もりや香りは感じる余地はあまり無い。

  しかしここでは剥き出しな木が四方八方に存在する。
温泉の硫黄成分に混じって、木の成分を感じることが出来る。
もちろん、本来の肌触りも。

  「上の湯」と「下の湯」には、水道の蛇口もシャワーも無い。
湯に注がれる筧だけである。

  窓の外からは涼しい空気が入り、黒湯沢のせせらぎ(実際には砂防ダムの滝の音?)が聞こえる。
それだけで充分である。


 

  充分満足して脱衣所に向かうと、そう言えば「打たせ湯」に入っていない。
  そこで意を決して、裸のまま腰にタオルを巻いて外へ。
すぐ近くの「打たせ湯」の小屋に入って、湯を肩や首筋に当てる。

  すると思っていたよりも気持ち良い。
下手なマッサージチェアーよりもよい。
『おお、いいかも 〜 ^^』

  ・・・などと思っていると、外に人の気配が・・・
先程も言ったが、この「
打たせ湯」は外から半分丸見えの構造。
  入り口の扉が無くて、上半分が御簾で隠されているだけ。
胡坐をかいて打たせ湯を浴びていると、外から丸見えの状態である。

  時折 外を通る客の視線を若干感じながらも目を閉じて打たせ湯を楽しんでいると、何か強い視線を感じる・・・
目を開けて入り口を見てみると、見知らぬオジサンが入り口で『おお、気持ち良さそうやの〜』と繁々と覗いている。

  まあ、外から丸見えに近い状態と分かって入浴していたので気にせずに湯に打たれる。
・・・ やがてオジサンの気配は感じられなくなった。

  打たせ湯の小屋を出て、「下の湯」の建物に戻る。
そこで服に着替える。
  そして外に出て駐車所に向かう。

『嗚呼、あのオヤジがいなけりゃ 最高だったのにな・・・』などと思いながら、帰途に向かう 千石であった。


PS.帰りに田沢スキー場の麓の水沢温泉にある「蕎麦五郎」で十割蕎麦
(田舎蕎麦=今は600円)を食す。
    店の雰囲気が良く、蕎麦の食感もいかにも手打ち蕎麦という良い感じだが、
    蕎麦粉の香りがイマイチ強くなかったのが残念。
      後から血管を広げてくれるような蕎麦独特の感触も少なかったかな???
    それでも悪くは無い  ^^
      お近くを通った際は、是非とも立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

乳頭温泉の残りは「孫六温泉」だけです。
休日はあまりありませんが、暇を見つけて行きたいと思っています。




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